引き続き、職員が定着し収益も伸びる病院・介護施設の組織課題別経営改善方法についてです。
医療・介護のサービスの標準化を目指す改善パッケージ
前回は組織が抱える課題別改善パッケージとして、経営方針やビジョンの浸透を目指す改善パッケージをお伝えしました。
医療・介護のサービスの標準化の進め方
医療・介護サービスの標準化を目指すには、まず、どんな状態が標準なのか、言い換えると、あるべき姿や理想の状態を定義することが必要です。
職員によってばらつきがある時、実はそもそも本来のあるべき姿はどのような状態なのか共有されていないケースがほとんどです。
共有されているとは、感覚的に分かっていることではなく、経営方針と同様に文書等で明確化され、目に見える方になっていることが必要条件です。
あるべき姿とは、医療・介護のサービスの最終的な結果だけではなく、重要なプロセス毎に明確にする必要がありますし、医療・介護のサービスだけではなく、必要な力量基準といった人的資源も含まれます。そして、あるべき姿に近づけるための方法として効果的な業務改善の仕組みまでが求められます。
医療・介護サービスの標準化を目指す改善パッケージ
- 業務の流れを見える化し、マニュアルや書式の最新版管理をする
- 効果的な改善活動の仕組みを作る
- 必要な力量基準を見える化させる
それでは1ずつ見ていきましょう。
業務の流れを見える化し、マニュアルや書式の最新版管理をする
業務の流れを見える化させたものを業務フロー図と呼びます。ほとんどの医療介護現場ではマニュアルは整備されていると思いますが、業務フロー図をしっかりと作っているところはそれほど多くはないと思います。
効果的な改善活動の仕組みを作る(H4)
効果的でない改善活動になってしまう理由は2つあります。1つ目はインシデント・アクシデントが発生した原因を深堀していないこと、2つ目は改善活動に効果があったかどうかを確認する仕組みがないことです。
病院や介護施設でよくあるインシデント・アクシデントに誤薬があります。そのレポートに、原因は確認不足、対策として配薬方法の周知徹底と書かれているとすれば、まさに深堀が不足している改善活動と言えます。
原因とされている確認不足はどうして起こったのでしょうか。
- 臨時処方が出ていた情報が記載されていなかった→変更点不管理
- 朝薬・昼薬・夕薬が配薬カート内で混ざりやすい状況は発生していた→不適切状態の放置
- 配薬の途中で別の職員に業務をお願いしてしまった→自工程不完結
同じ確認不足でも深堀すると確認不足に至ってしまった原因が見えてきます。そこまで原因が深堀出来ていれば、周知徹底という形式的な対策にはならないはずです。
最初はなかなかそこまでの深堀は出来ないと思います。最初は医療における典型的な事故原因を教育し、インシデントやアクシデントの原因がそれらのどれに該当するのかチェックさせる形式を採用してもよいでしょう。
医療における典型的な事故原因については、“医療版失敗学”という理論で体系化されています。ネットで検索すると出てきますので参考にしてみて下さい。
原因が深堀されて、そこに対しての改善策が書かれていたとしても、効果確認のプロセスが無ければ意味がありません。なぜならば、改善策が効果があったかどうかは実際に行ってみてからでないと誰も分からないからです。
したがって、改善活動では半年後など、一定の期間で対策を実施してみてから結果がどうだったのか効果確認をするプロセスを必ず入れて下さい。
効果確認が無いと報告書を提出しておしまいになってしまいます。どうしても提出することが目的となってしまい、改善活動が形骸化してしまうのです。
必要な力量基準を見える化させる
業務フロー図がしっかりとでき、そこに紐づけてあるべき姿が描けていると、各プロアセスで必要な力量基準はすんなりと決まってきます。
たとえば、外来の注射業務という業務フロー図であれば、重要なプロセスに「注射箋の内容を確認し、必要となる注射剤等を用意する」というのがあると思います。
このプロセスをこなすためには以下の力量が備わっていないと出来ないはずです。
- 注射箋の内容を理解できる
- 注射剤の種類と保管されている場所を把握している
- 注射箋の内容に不足かないかを判断できる
こういった必要な力量基準が見える化されていれば、その業務を標準的に遂行する能力があるかどうかを判断できますし、不足している場合は教育すべきポイントが理解できます。
これらは通常であれば先輩看護師やベテラン看護師の方の頭の中にあるもののはずです。どこまで詳しくするかは状況によりますが、彼ら彼女らの頭の中にあるデータを文書化し、誰でもアクセスできるようにするというイメージです。いわゆる暗黙知を形式知にするということです。
医療現場にはどうしても暗黙知で眠っているものがたくさんあります。それをマニュアルなり文書化なりに形式知化させることで全員で共有できるようになり、業務の標準化を一気に進めることができます。
次回は、職員モチベーションの向上を目指す改善パッケージについてお伝えします。
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