職員が定着し収益も伸びる病院・介護施設の組織課題別の経営改善方法 その⑤

2022年6月7日火曜日

組織課題別解決策 組織経営

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医療・介護のサービスの標準化を目指す改善パッケージ

前回は組織が抱える課題別改善パッケージとして、サービスの標準化に課題を抱えている場合の改善パッケージをお伝えしました。

今回は、職員のモチベーションに課題を抱えている場合の改善パッケージについてです。

 

職員モチベーションの向上を目指す改善パッケージ

モチベーションは人の心理状態なので、制度や仕組みの様に直接手を加えることはできません。しかし、制度や仕組みを整え回すことで間接的に組織に所属する人間の心理状態を変えることはできます。

モチベーションを高める方法は、外発的動機づけと内発的動機づけの2つがあります。外発的動機づけとは物理的報酬の事です。医療職を含めたサラリーマンの場合はほとんどがお金でしょう。一方で内発的動機づけとは、心理的な報酬のことです。成長や上達など、自己評価として得られるものです。

モチベーション向上のためには、これらの動機づけをうまく活用して制度や仕組みを整えていくことが重要になってきます。

 

職員モチベーションの向上を目指す改善パッケージ

  1. 外発的動機付けと内発的動機付けをうまく活用する
  2. 上司フィードバックを大切にする
  3. 成長の機会を作ってあげる

 

それでは1ずつ見ていきましょう。

 

外発的動機付けと内発的動機付けをうまく活用する

外発的動機付けと内発的動機付けをうまく活用するとは、バランス良く活用するという意味です。それぞれに長所短所があるからです。外発的動機付けの代表はお金、内発的動機付けの代表は自己評価であると述べましたが、それを例に長所短所を説明します。

外発的動機付けの長所はシンプルで分かりやすく効果がすぐに出やすいというところです。短所は効果がすぐに失われ、実施にコストがかかるというところです。

大体の人は給与が上がればモチベーションが上がります。ただ、数か月もすればその給与が当たり前になってしまいます。モチベーションを上げ続けるには給与を上げ続けなければいけません。そんなことは現実的ではありません。

内発的動機付けの長所は、行動そのものが目的になるため質の高い行動につながりやすいというところです。医療職の場合、専門職としての知識や成長が実感できることや今までできなかった処置等が出来る様になると嬉しくなります。もっと上達したいと感じます。これが内発的動機付けです。専門職としての成長そのものが目的になっているため、専門職としての力量が伸び、質の高い医療サービスにつながります。

一方で短所は、効果が得られるまでに時間がかかるというところです。努力したからといってすぐに成長が実感できるとはかぎりません。ある程度の期間、モチベーションを維持して取組み続ける必要があります。また、何がその人の内発的動機付けになっているのか分かりづらく、外発的動機付けに比べると複雑ともいえます。

外発的動機付けと内発的動機付けはどちらが良いというものではありません。それぞれの長所短所を理解した上で利用すべきです。

例えばモチベーション向上の対策を行う際に、この対策は外発的動機付けと内発的動機付けのどちらに属するものなのか、一方に偏っていないのかバランスを取りながら実施していく等の利用の仕方が考えられます。

 

外発的動機付けを活用した対策の例

  • 賃金規定の改定
  • 褒賞制度の整備
  • 福利厚生制度の整備


内発的動機付けを活用した対策の例

  • 力量基準の明確化と教育制度の整備
  • 目標管理制度の整備と上司フィードバックの活用
  • 上位資格の取得サポート


上司フィードバックを大切にする

上司から関心を向けられていて、適切なフィードバックを受けられていることは職員のモチベーションに大きな影響を与えます。愛情の反対は無関心と言われます。個人的な相性はあったとしても上司に気にしてくれているということは重要なモチベーションの要素になります。

この対策を行う上では、フィードバックの機会を設定する、上司のフィードバック力を上げるの2つを実施する必要があります。


フィードバックの機会を設定する

最近は1on1ミーティングという言葉もメジャーになりましたが、まずは上司と面談をする機会を設定することが大切です。

例えば、試用期間中の上司面談のルール化、半期ごとの人事考課の際の上司面談のルール化などがこれにあたります。そして形骸化しないように、必ず面談実施の報告を上司が人事課なり上位上司に報告することもセットで取り組む必要があります。


上司のフィードバック力をあげる

フィードバックには得意不得意があります。上司のキャラクターによっても多少色がでてくるでしょう。ただし、欠点ばかり指摘したりパワハラまがいのフィードバックをしたりしては問題です。最低限のフィードバック水準は必要です。

例えば、最初に出来ている点をフィードバックし、最後に更に良くなるためにとして改善点を伝えるという順番の法則が大切です。

また、上司ばかりが話すのではなく、部下に考えさせ、自発的な改善へと導くコーチングのスキルもあった方が望ましいでる。

上司フィードバックは、それまでの経験であったり、自身の価値観であったりに基づいて実施しているケースが多くあります。モチベーションマネジメントに関する基本的な理解や目的の共有も図っておくことが重要です。


成長の機会を作ってあげる

成長の機会にも様々なものがありますが、ここでは、基本的な部分として、教育の機会の確保をあげてみたいと思います。

教育の機会の確保とは具体的には以下の対策を指しています。

  1. 新人教育計画、管理職教育計画など、予めキャリアや特徴に応じた教育計画を整備し、文書化して共有する。
  2. 学会や外部研修などの出張申請の仕組みを整備する。
  3. 上位資格取得に向けてのサポート体制を整備する。

 

1,2については手上げしてきた職員を全て参加させる必要はありません。あくまでも自発的に手上げが出来るという環境を整備し、周知させるだけで効果はあります。ただし、予算の設定や手上げする上での力量基準など、可否の客観的基準は整備し、可否の理由を明確に説明できるようにはしておきましょう。

次回は、職員が定着し収益も伸びる病院・介護施設の課題別経営改善方法の最終回です。

これまでお伝えしたポイントをまとめます。

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病院・介護施設・福祉サービス事業所など組織力を高め、「人が集まる組織」、「人が辞めない組織」を作る専門家。 「定着率を2倍にする3つの視点」をベースに、採用・定着に関する仕組みづくりを総合的な組織改善を通してプロデュースしている。  高額でありながら離職しやすいとされる人材紹介サービス会社との付き合い方や対策アドバイスを専門的に行えるのは業界唯一である。

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