マネジメント力の高い組織とはどのような状態にある組織なのかを具体的に描いている今回のシリーズコラム。最終回の本日はモチベーションマネジメント編です。
方針マネジメント編はこちらをご覧ください。
3つの重要なマネジメントの具体像について 方針マネジメント編
サービスマネジメント編はこちらをご覧ください。
3つの重要なマネジメントの具体像について サービスマネジメント編
経営の根幹となる3つのマネジメントとは
復習です。経営の根幹となる3つのマネジメントとは「方針マネジメント」、「サービスマネジメント」、「モチベーションマネジメント」の3つでした。
その中で今回注目するのは「モチベーションマネジメント」です。
モチベーションマネジメントを構成する5機能
「モチベーションマネジメント」は以下の5つの機能で構成されます。
- ソーシャルサポート
- 信頼関係
- 職場の雰囲気
- モチベーション
- 能力発揮・成長機会
これらの機能はさらに下位機能によって支えられています。それぞれの機能について詳しく見ていきましょう。
機能①「ソーシャルサポート」について
ソーシャルサポートとは、社会や組織の中における人とのつながりにおいてもたらされる、精神的であったり物質的であったりする支援を指します。ソーシャルサポートが適切に受けられるとストレスの緩衝材となる効果があると言われています。
対人援助職である医療や介護・福祉の仕事ではストレスが日常的に発生します。そのような状況下でも組織の中でソーシャルサポートが適切に受けられればストレスを緩衝し、モチベーションを維持することが出来ます。
ソーシャルサポートをしてくれる対象
職場の中で主にソーシャルサポートを提供してくれるのは上司と同僚です。モチベーションマネジメントの状況をチェックする際にも、まず、上司としてのソーシャルサポートがどれくらい機能しているか、同僚とのソーシャルサポートがどれくらい機能しているかをチェックしていきます。
ソーシャルサポートの内容
ソーシャルサポートの内容は主に3つに分けられます。“情報的サポート”と“道具的サポート”、“情緒的サポート”です。
それぞれ、「必要な時に相談にのってくれるか(情報的サポート)」、「一緒に問題解決に取り組んでくれるか(道具的サポート)」、「自分のことを理解してくれているか(情緒的サポート)」といった側面から理解します。
まとめ
職場内のソーシャルサポートの機能を理解する際には、ソーシャルサポートを提供する対象(上司と同僚)が、それぞれソーシャルサポートとしての機能(情報的、道具的、情緒的)を果たしているのかという2点からチェックしていきます。
機能②「組織信頼」について
職場という組織への信頼感もモチベーションに大きく影響を与えます。一言で信頼感といっても大雑把になってしまうので、信頼感についてもいくつかの機能からチェックしていきます。
組織の将来性
組織の将来性に不安がある状態ではモチベーションを維持することはできません。将来性とは組織が持続的に存在し、成長の可能性を持っていると感じることです。大切なのは「感じる」ということです。組織内に漂う雰囲気として「何だか閉塞感のある組織だなぁ。」と皆が感じているかどうかです。客観的な財務状況とは直接的には関係ありません。
経営信頼
組織の決定や運営を信頼できると感じられているかもモチベーションに影響を与えます。これは経営層の姿勢が反映されます。経営者が「思いつきで行動している」、「好き嫌いで判断している」と捉えられれば決定への信頼感は失われます。経営者が公私混同していたり、誠実さに欠けていたりしても組織運営への信頼感は失われます。
上司や同僚への信頼感
毎日接することになる上司や同僚への信頼感は日常的なモチベーションに大きく影響します。これは上司や同僚のソーシャルサポート機能がどれくらい発揮されているかにも依存します。
まとめ
このように組織への信頼感は、組織の永続性に関わる部分、経営の透明性に関わる部分、身近な存在である上司や同僚との関係性に関わる部分に分けることが出来ます。信頼感=人とのつながりと捉えがちですが、ガバナンス(組織統治)という点からもチェックしていくことが大切です。
機能③「職場の雰囲気」について
職場の雰囲気はモチベーションに影響を与える最も重要な要素の1つです。究極的には皆がありのままでいられるということが大切なのかもしれません。機能的にもいくつかのポイントがあります。自由に話が出来る雰囲気があること、助け合いの精神があること、溶け込めない孤立した部署員がいないことなどがチェックポイントです。
機能④「モチベーション」について
モチベーションの機能は他の機能の最終的なアウトプットと言えるかもしれません。そのものずばりの個人レベルでの動機づけのことです。モチベーションは外発的モチベーションと内発的モチベーションの2つに分けられます。
外発的モチベーション
外発的モチベーションとは、その行動の対価として外部から与えられる報酬を目的に動機づけられる状態を指します。仕事内容に見合った賃金を得られているか、人事考課の結果として組織から正当な評価を得られているかが該当します。
経営信頼
内発的モチベーションとは、その行動をとること自体が動機づけになっている状態をさします。仕事をすることが楽しかったり、やりがいを感じられたり、自分に向いていると強く確信したりするというものが該当します。
まとめ
外発的モチベーションは介入しやすく即効性もありますが、効果が持続せずすぐに慣れてしまいます。例えば給与をあげても数か月もすればその状態に慣れてしまい動機づけの効果は薄れます。一方で、内発的モチベーションは即効性はありませんが、効果が長く続きます。それぞれの特徴を理解したうえでバランスよく組み合わせるのが大切です。
機能⑤「能力発揮・成長機会」について
自分の能力を発揮できているか、成長している実感があるかもモチベーションには重要です。特に、医療や介護、福祉といった専門職集団の組織の場合はそれぞれに専門性のオリエンテーションを持っており、それらを発揮できているかはモチベーションを大きく左右します。
専門性発揮
仕事の中で自分の専門性や長所を発揮できているかどうかです。ここでいう専門性や長所は、看護師や介護職といった資格で区別されるものもありますし、価値観や得意なものという個々人の意識レベルで区別されるものもあります。
教育・研修の機会
教育、研修の機会が確保されているかもモチベーションに影響を与えます。ここでの確保とは、組織としての教育カリキュラムや計画が設計されて実行されているかどうかも該当しますし、個々人にセミナーや学会への参加等の機会が保障されているかどうかも該当します。
キャリア形成環境
組織に所属し続けることがキャリア形成にポジティブに作用していると実感できることもモチベーションの構成要素です。つまりは新しい発見や学びが得られ、その結果として今後も成長し続けることが出来る環境にあるかどうかです。
まとめ
能力発揮・成長機会は力量や教育と密接に関わります。力量や教育のコントロールはサービスマネジメントにおいても重要でした。「医療は人なり」の言葉通り、人的資源が最重要な医療や介護、福祉においてはサービスの質とモチベーションの両面からこれらは重要なポイントと言えます。
今回のまとめ
今回はモチベーションマネジメントの機能から具体的な構成要素をまとめてみました。モチベーションマネジメントを機能させるために、今回とりあえげた要素に分解して打ち手を施すことが大切です。
モチベーションマネジメントに関する改善パッケージは「職員が定着し収益も伸びる病院・介護施設の組織課題別の経営改善方法 その⑤」にもまとめていますので是非ご覧ください。
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