マネジメント力の高い組織とはどのような状態にある組織なのかを具体的に描いている今回のシリーズコラム。本日はサービスマネジメント編です。
方針マネジメント編はこちらをご覧ください。
経営の根幹となる3つのマネジメントとは
復習です。経営の根幹となる3つのマネジメントとは「方針マネジメント」、「サービスマネジメント」、「モチベーションマネジメント」の3つでした。
その中で今回注目するのは「サービスマネジメント」です。
サービスマネジメントを構成する3機能
「サービスマネジメント」は以下の3つの機能で構成されます。
- 設計・モニタリング
- 改善活動
- 力量の見える化
これらの機能はさらに下位機能によって支えられています。それぞれの機能について詳しく見ていきましょう。
機能①「設計・モニタリング」について(H2)
サービスマネジメントを行うためには、有形であれ無形であれ提供するサービスの手順を標準化する必要があります。医療や介護、福祉は無形のサービスで標準化しづらいものではありますが、Aさんが行うケアとBさんが行うケアが全く異なっていては組織として一定水準のサービス提供がままなりません。ある程度の標準化は必須です。
標準化するためには、サービスの流れを明確にし、それが確実に実施されているかチェックする仕組みが必要です。これが「設計・モニタリング」の機能です。
プロセス設計
「設計・モニタリング」の最初のプロセスは、「プロセス設計」です。これは仕事の手順を明確に決める作業です。手順を決めるとは、特定の仕事について、最初に何を行い、次に何を行い、最後に何を行うというように時系列に仕事の流れを整理していくことです。フロー図を作成するとも言えます(フロー図については“すぐに実践したくなる、結果が出る経営の仕組みづくり その②もご覧ください:)。
期日設定
「設計・モニタリング」の2つ目のプロセスは「期日設定」です。その名の通り、その仕事をいつまでに実行するのかを明確に決めることです。「期日設定」は「プロセス設計」とセットです。各プロセスをいつまでに完遂しなければいけないのかを同時に決めます。
進捗確認度
「設計・モニタリング」の最後のプロセスは「進捗度確認」です。「プロセス設計」で決めた手順と「期日設定」で決めた締め切りが守られているかをモニタリングしていく機能です。進捗確認が弱い組織ではルールが形骸化したり、決めたことも尻切れトンボで自然消滅したりするという事態が発生します。
まとめ
この様に、「プロセス設計」を行い「期日設定」を行い、「進捗確認度」でそれらをモニタリングしていくという3つの機能をそろえることで「設計・モニタリング」機能が有効になります。これらはサービスマネジメントの根幹です。いわばサービスの設計図に他なりません。「設計・モニタリング」を確実に機能させることからサービスマネジメントが始まります。
機能②「改善活動」について
サービスを標準化することだけではなく、サービスの質を向上させ続けていくこともサービスマネジメントの重要な目的です。医療、介護、福祉においてもケアの質を向上させるとのいうのは重要な取り組みでしょう。その機能となるのが「改善活動」です。「改善活動」も複数のプロセスに分けられます。
改善の仕組みの明確度
「改善活動」の最初のプロセスは「改善の仕組みの明確度」です。いざ改善活動をしようと思ってもどういう手順で進めれば良いのか分からなければどうしようもありません。経営者が「わが社は業務改善に積極的に取り組む!!」と言ってもその手順を職員が分かっていなかれば進めようがありません。
業務改善の仕組みを明確にして職員と共有する必要があります。そしてそれを形だけにしないことも必要です。形だけにしないとは、その業務改善に効果があったのかしばらくして効果確認も行うということです。効果確認をしないと「改善レポートを出せばいいんでしょ。」と改善活動が形骸化してしまいます。
失敗を改善に生かす
「業務改善」の2つ目のプロセスは「失敗を改善に生かす」です。業務改善の仕組みが整っていても、「業務改善=反省文」、「インシデント・アクシデント=個人の責任」という風土では積極的な改善活動は生まれません。失敗をしても、組織としての課題が見つかった、次に活かそうという雰囲気が醸成されていることが重要です。
予防する意識
「業務改善」の最後のプロセスは「予防する意識」です。ハインリッヒの法則をご存じでしょうか。ハインリッヒの法則とは、1つのアクシデントの背景には29のインシデントが潜んでいて、さらにその背景には300もヒヤリハットが隠れているというものです。アクシデントが発生する前にたくさんの「危なかった・・・。」が存在しているのです。
予防する意識の高い組織では、インシデントやヒヤリハットの段階で「いつか失敗しそうだな・・・。」と気が付いてアクシデントが起きる前に改善活動につなげることが出来ます。
まとめ
改善の仕組みが明確になっていて、失敗を隠すのではなく改善に生かそうという雰囲気が作られていて、予防にまで意識が向いている状態になっていれば、その組織の「改善活動」は理想の状態になっていると言えるでしょう。
機能③「力量の見える化」について
サービスマネジメントを行うためには、そのサービスを提供するために職員がどのような力量を身につけなければいけないかを明確にしておく必要があります。必要な力量が明確になっていればそこに向けて教育計画も立てることが出来ます。
「力量の見える化」では、「力量の明確化」と「力量の把握」の2点から分析します。
力量の明確化
「力量の明確化」とは、まず、職場やその仕事で必要とされるスキルや知識が抽出されており、箇条書きや一覧表等に明文化されていることが必要です。そして、それを身に着けるための手順もセットで設計しておく必要があります。
力量の把握
力量が明確になっていてもそれに基づいて、誰がどんな力量を持っていてどんな適性があるのかを把握していなければ意味がありません。従って、定期的に各自の専門性や長所を評価し、それに応じて仕事を割り振る必要があります。それが出来ているのかをチェックするのが「力量の把握」です。
まとめ
力量チェックというと人事考課が思い浮かびますが、サービスマネジメントの視点に立つと本質はそこではありません。必要とされる力量を決め、定期的にチェックする仕組みがあって、それに応じて適正業務に配置する、そして教育も同時に行い力量も向上される。このサイクルを回すことで組織が提供できるサービス自体の向上につなげていくのが目的です。
今回のまとめ
今回はサービスマネジメントが機能しているとは具体的にどのような状態の組織なのかをまとめてみました。逆に言うと、サービスマネジメントを機能させるためには、今回とりあげた要素を確立していくことが必要と言えます。
サービスマネジメントに関する改善パッケージは「職員が定着し収益も伸びる病院・介護施設の組織課題別の経営改善方法 その④」にもまとめていますので是非ご覧ください。
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