経営方針の見える化と伝達の具体的方法について その②

2022年9月27日火曜日

具体的事例 経営の仕組み

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方針やビジョンを職員に伝える場をどのように確保するべきか

作成した経営方針やビジョンをいつ職員に伝達し、理解と浸透を図るかは重要な問題です。(経営方針やビジョンの作成についてはこちら:経営方針の見える化と伝達の具体的方法について)日常業務の中でゲリラ的に伝えることも良いかもしれませんが、私は以下のタイミングで仕組み化したうえで伝達の機会を作ることをお勧めしています。

  •  年始の顔合わせ
  • 入社式
  • 職員総会
  • 記念イベント

 順番にみていきいましょう。

 

年始の顔合わせで伝える

最近は簡略化されていますが、まだまだ多くの組織で年始に全職員や幹部職員があつまって顔合わせを行う機会があると思います。この機会は方針やビジョンを伝える絶好のタイミングです。

顔合わせでは、社長や理事長あるいはしかるべき代表者が挨拶をする機会があると思います。その際に「あらためてお伝えしますが・・・」と中長期経営計画のキャッチコピーや“なりたい姿”を話してみてください。できれば、前年の進捗と今年の計画についても簡単に触れると良いです。

 

入社式で伝える

新年度の初日には、多くの組織で入社式が行われると思います。入社式の機会も方針やビジョンを伝える絶好のタイミングです。

新入職員の皆さんに「最初のミッションは経営方針とビジョンをしっかりと理解し、自身の価値判断の基準にすることです。」などとして伝えるのも良いかもしれません。

ただし、入社式の挨拶であっても、その対象は新入職員だけではありません。そこに同席している職員に対しても伝達と浸透の機会になります。むしろそちらの方が重要かもしれません。職員は年始の挨拶の記憶がまだ残っているので「また同じことを言っているよ。」と感じているかもしれません。そう感じてもらうことが浸透させるうえでとても大事だからです。

 

職員総会の勧め

私の知っている複数の法人では、毎年、職員総会を開催していました。そのタイミングで経営方針とビジョンの説明を行っていました。これは経営方針とビジョンの伝達と浸透の機会として強力に機能します。

職員総会とはその名の通り、法人に所属する全職員を集めて行う総会です。最低限の人員だけを残して平日に開催する場合もありますし、休日にイベントとして開催する場合もあります。全職員が入れる会場を用意しますので、外部のコミュニティセンターやホテル等の式典会場を借ります。

年始の顔合わせや入社式は大組織でない限りは、通常業務を中断し、病院や施設の一角で行われるケースが殆どです。職員総会の場合は、先述の通り、日常業務から完全に切り離して、外部の施設を使って行います。その特別感と集中できる環境が職員総会最大のメリットです。

職員総会では以下のことを行います。職員総会の開催は年度末に行うケースが多いのでその想定でアジェンダの例を挙げます。

  •  今年度の業績指数の説明(患者数、利用者数、CSES等)
  • 今年度の経営計画進捗結果の報告
  • 次年度の経営計画の内容
  • 次年度の各部門の戦略実行計画の内容

 

コロナ禍で、多くの人を1つの場所に集めるのは控える傾向にあり、ここ数年は職員総会を開催し辛い状況にありました。しかし今後はその状況も改善していくと見込まれます。

 

記念イベント

法人の記念イベントも経営方針や伝達に向いています。例えば、30周年記念式典や新社屋の完成式典などが該当します。職員総会以上に特別感が生まれ、職員の記憶にも残りやすいです。ただ、これはタイミングが合うかどうかですので、こちらで機会を作れるわけではありません。

もし、近いタイミングで記念イベントがある場合は、そこで経営方針やビジョンをお披露目できるように計画的に準備をして有効活用することをお勧めします。

  

年始の顔合わせ、入社式、職員総会は毎年行うことが出来ます。これらを経営方針とビジョンを伝達する機会とすれば年に3回は伝達出来ます。経営方針とビジョンを浸透させるためにはとにかく繰り返しが大切です。年間のスケジュールに紐づけて反復させることがポイントです。

最後に動画配信についてです。コロナ禍もあって、最近では職員が特定の場所に集まるのを避けるために動画配信を行う組織も増えています。ライブ配信であれば良いのですが、オンデマンドでいつでも見られる様にする場合は配信してそのまま、実は見られていないという事態も起きかねません。

出来ればライブ配信、あるいは配信の時間を決めてそれに合わせて視聴してもらうのが望ましいです。それが出来ずにオンデマンド配信とする場合も、期間限定として、その間に視聴してもらい、視聴の有無をチャック出来る仕組みを入れるようにしましょう。

 

まず誰に伝達し浸透させるべきか

経営方針とビジョンを作成したら、まずは誰に伝達し浸透を図るべきでしょうか。私は直下の部下からと考えています。すなわち、理事長や社長が経営方針やビジョンを作成したのなら、その直下にあたる経営幹部や部長にまず伝達すべきです。

ただ、経営幹部や部長のみ伝達すれば良いと言っているわけではありません。先ほど述べたとおりに全職員に向けたオフィシャルな場を確保するとともに、直下の部下には入念に経営方針とビジョンの浸透戦略を立てる必要があるという意味です。組織風土変化の鉄則からそのようにしています。

上司が大切にしていないことを部下に大切にさせることはできません。「部長はやっていないのに何で俺がやらないといけないのか」と課長が愚痴ります。課長がそう愚痴れば「課長もそういってるし私も適当でいいかな。」と主任が感じます。したがって、組織風土を変えていくならばトップからは鉄則です。

 

直下に中期経営戦略にコミットしてもらう

経営幹部や部長に経営方針やビジョンを浸透させるためには、彼ら彼女ら自身に中期経営計画にコミットしてもらう必要があります。 

かなりトップに近い経営幹部の場合は、経営戦略やビジョンを作成するところから関わってもらうのも良いでしょう。そうでない場合は、中期経営戦略に紐づく活動を作ってもらうことにしています。 

中期経営戦略に紐づく活動とは、組織全体の中期経営戦略を作った後に、それを受けて、経営幹部や部長の管轄する部署においてどのような中期的活動が必要かをまとめてもらう作業を指しています。

私がこれを行う場合は、フレームワーク化して、共通書式の中で作成してもらうようにしています。そして作成した中期経営戦略を管轄部署の職員向けに発表してもらうことにしています。

経営方針やビジョンを聴くだけではなく、自分の頭と手を動かす活動をはさめることで理解と浸透のスピードは格段にアップします。それを自分の管轄部署に発表することで責任も生まれます。


大切なのは範を示すことと進捗管理

経営方針とビジョンの浸透に終わりはありません。浸透と定着は少しずつしか進みませんが、崩れるのは一瞬です。継続しか成功の道はありません。そのために大切なのは範を示すことと進捗管理です。

 

範を示すこと

繰り返しになりますが、「〇〇をやろう!!」といっても上司本人がそれを蔑ろにしていて部下がついてくるわけがありません。反面教師という言葉もありますが、上司の価値判断基準は部下の価値判断基準になるのが原則です。


地域に開かれた組織を作るというのであれば、自ら地域に飛び出す姿を示すことが必要です。

残業を少なく、有休も取得させるというのであれば、自らもその様な行動をとらなければいけません。

 

経営方針とビジョンに責任を持ち、自らの言動で範を示すことが大切だと言えます。


進捗管理について

経営方針とビジョンの進捗管理も大切です。ここでは経過報告も含めて進捗管理と言っています。つまりは、経営方針とビジョンを説明して終わりにしないということです。

経営方針とビジョンを作成して、職員に説明したら、年に1回は経過報告をするようにしてください。経営幹部や部長が作成した中期経営計画も同じです。冒頭で述べた職員総会はその機会としてもぴったりです。私は、今年の経営計画の再確認と、やったことと出来なかったこと、その理由、来年度の経営計画の報告をするようにしています。

報告のためにはコツコツと中長期計画を進めなければいけません。トップといえども人間です。どうしても気のゆるみが出たり、目の前のことに追われて後回しにしたりしてしまいます。報告の機会を作ることで緊張感が生まれ、確実に中長期計画を進める後押しになります。

毎年経過を報告してもらえることで、職員の側にも経営計画の重要性の理解が進むとともに、経営サイドへの信頼感も生まれます。

 

まとめ

今回は経営方針の伝達についての具体的方法をお伝えしました。

  •  報告のタイミングを仕組み化する
  • 直下にあたる部下をメインのターゲットし、中期経営戦略にコミットしてもらう
  • 大切なのは範を示すことと進捗管理

 

以上をポイントにして実践してみましょう。

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