医療介護福祉組織の風土を確実に改善させる4つのプロセス その①

2022年7月19日火曜日

マネジメントシステム 組織経営

t f B! P L

 サービスマネジメントを構成する4つのプロセスとは

組織風土を改善させるのは、経営の根幹であるサービスのマネジメントを確実にするしかありません。

当たり前であるが、医療や介護、福祉施設は様々な専門職が現場でサービスを提供することで事業を発展させるビジネスモデルです。

その人的サービスをしっかりマネジメントすべきと言っているのだから当然と言えば当然です。ただし、本当にしっかりと仕組み化できている組織は少ないのも事実です。

自慢ではないですが、私はこの仕組みをしっかりと根付かせることで、離職率25%以上であった組織が離職率6%以下まで改善する事例を経験したことがあります。

さてそれでは人的サービスをマネジメントする上でのポイントはどこにあるのでしょうか。

実はそのポイントはたった4つしかありません。

究極的には下図の仕組みを組織内に構築すればよいと言えます。


「なんだPDCAじゃないか」というため息が聞こえてきそうです。

その通り、PDCAの運用図です。

ここでのポイントは運用図という点です。

PDCAの知識や考え方は医療介護福祉領域でも広く浸透しています。

しかし、どうやったら効果的に運用できるかまでは考え抜かれていないのではないでしょうか。

形だけのPDCAが横行しているのではないでしょうか。

PDCAを効果的に運用するには、それぞれのプロセスを精緻に設計しなければいけません。

今回のシリーズコラムでは、効果的なPDCAを設計し、人的サービスのマネジメントに活用する方法をまとめます。


その 方針展開プロセス

まずはPlan(計画)にあたる方針展開プロセスについてまとめます。

方針展開プロセスを構成するのは次の3つです。


  1. 組織の責任権限
  2. 計画作成のルール
  3. 組織資源の管理

それぞれを見ていきましょう。


マネジメントの源となる組織の責任権限

当たり前であるが組織の全体像を描かなければなら始まりません。

そこでまずは組織図を作ります。

組織図を作る時のポイントは、どの役職がどこを管轄するのかというマネジメント範囲を意識しながら作ることです。

次に責任権限を明確にします。

責任権限とは、どの役職がどのような役割を求められ、その役割を果たすためにどのような権限を与えられているのかを明文化したものです。

組織図がマネジメント範囲を意識して作られている場合は、責任権限作成のプロセスに移りやすくなります。

病院を例にとりましょう。

多少の役職名の差はあっても、病院であれば大体決まっていると思います。


  1. 理事長
  2. 院長(副院長)
  3. 事務長
  4. 看護部長やその他の部長
  5. 師長や部署長
  6. 主任やリーダー
  7. 一般職

多くはこういった感じでしょう。

これらの役職それぞれに責任と権限を明文化していきます。

ここは箇条書きで構いません。分かりやすさや、伝わりやすさを第1に考えましょう。

責任権限を明文化すること、役職者本人はもちろん、周囲からも誰がどのような責任権限を期待されているのかがはっきりします。そして組織運営がスムーズになります。

役職者が機能していないという話の大部分は、本人も周りもどんな責任権限が与えられているのかが分かっていなかったというコミュニケーションの問題と言えます。

参考までに理事長と部長の責任権限の例を掲載します。


マネジメントの羅針盤となる経営計画作成のルール

組織がどの方向に走り出せばよいのかを示すのが経営計画です。

そのルールを明確にします。

基本的には以下の点についてのルールを決めることになります。


  1. 目標の種類(例:長期経営計画、中期経営計画、年度部署目標 など)
  2. 目標の作成時期(例:毎年3月 など)
  3. 対象期間(例:1年間、3年間 など)
  4. 作成者(役職名を記載する)
  5. 承認者(役職名を記載する)
  6. 評価の時期と評価方法(評価の記録を何に残すかも明確にする)

作成者や承認者は先述した責任権限ともリンクしてきます。

マネジメントを実行するために必要な資源の管理

マネジメントを実行するために必要になってくるのが経営資源です。
従って、経営資源の管理方法も明確にすることが必須です。
再び病院を例に挙げますが、病院経営に関わる経営資源は以下のものが該当するでしょう。

  1. 医療機器
  2. 人材
  3. マニュアル

順を追って具体的に説明します。

① 医療機器
レントゲン、心電図モニター、MRIなどの医療機器が該当します。大きな機器だけではなく、体温計や血圧計等の小さいものも含める必要があります。
これらが、正確に作動することをどの様に管理し、何に記録を残し、記録をどこに何年保管するのかを1つ1つ決めていくのが医療機器の資源管理方法です。そしてそれらをまとめたのが医療機器管理台帳と呼ばれるものです。医療機器管理台帳の例を以下に示します。



② 人材
“医療は人なり”の通りに、医療サービスの根幹部分となるのが人材です。資源としての人材管理をまとめるとかなりのボリュームになってしまうため、今回のコラムでは概要に留めます。
ひとまず、「こんな内容を管理するんだな」というのを理解してもらえれば結構です。


③ マニュアル
 医療サービスの提供に欠かせないのがマニュアルです。欠かせないとは、サービス品質の標準化のため、知的財産としての組織ノウハウのアウトプットとして、の両方の意味を含んでいます。
ここでは病院組織内にある管理すべきマニュアルと管理方法の全体像について記載します。


今回は、サービスマネジメントの最初のプロセスである方針展開プロセスについてまとめました。

PDCAで言うところのP:Plan(計画)です。

計画というと、マニュアルがすぐに思いつきますが、精緻にサービスマネジメントを作り上げるにはマニュアルだけでは足りません。

  1. 組織の責任権限
  2. 計画作成のルール
  3. 組織資源の管理

と丁寧に積み上げていくのが大切になります。

次回は運用プロセスの解説を行います。






このブログを検索

ブログ アーカイブ

自己紹介

自分の写真
病院・介護施設・福祉サービス事業所など組織力を高め、「人が集まる組織」、「人が辞めない組織」を作る専門家。 「定着率を2倍にする3つの視点」をベースに、採用・定着に関する仕組みづくりを総合的な組織改善を通してプロデュースしている。  高額でありながら離職しやすいとされる人材紹介サービス会社との付き合い方や対策アドバイスを専門的に行えるのは業界唯一である。

QooQ