組織課題をどうやって見える化させるか

2022年9月15日木曜日

具体的事例 組織経営

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以前、「職員が定着し収益も伸びる病院・介護施設の組織課題別の経営改善方法 その①」において、経営改善には、まず組織課題を明確にする必要があるとお伝えしました。

何故なら、病院や介護施設に限らず組織改善が難しいのはどこから手を付けて良いのか分からないからです。そして、効果を出すためには、その組織が抱えている課題に応じて対処方法が変わっても来ます。

病気を治すためには、レントゲンや血液データなどの検査を行うのと同じで、組織のどこが病気なのか明確にしなければいけないということです。


組織課題を明確にするための具体的方法

今回は、組織課題を明確にする時に、実際に私が取り入れている方法を紹介します。

ヒアリングの実施

まず幹部職員にヒアリングを行います。幹部職員とは管理職以上のことです。
何を聴くかというと以下の3つです。

  • 部署のあるべき姿と現状を比較してギャップを感じるところはどこか。
  • 人間関係で困っていることはあるか。
  • 健康管理やモチベーション維持で困っていることはあるか。

これを30分程度の時間を使って私と幹部職員が1対1で行っています。
大切なのはヒアリングの目的を最初に伝えることです。
殆どの職員は何が始まるのかと身構えています。ヒアリングを行うポジティブな理由をしっかりと伝えることが重要です。

「経営者として組織を良くしていきたい、働き甲斐をもって仕事をしてほしい。そこを目指して組織改革を行いたい。そのために組織の現状を明らかにしたいので声を聞かせて欲しい。」というスタンスを明確に伝えます。

「課題を明らかにしたい、悪いところを直したいというと」としてしまうと、どうしても粗探しをされると誤解されます。経営サイドにとっても、働く職員にとっても、両者にとってより良くしたいというポジティブな目的のためにやるのだというメッセージをつたることがポイントです。

ヒアリング記録の取り方

30分程度あると結構話がきけます。それを出来るだけ自分の解釈を入れずにスタッフの言葉で記録します。録音したり、タイピングが得意だと直接PCに打ち込んだりしたくなりますが、あまりお勧めはしません。PCに目が生きがちになり、職員側に話をきいてもらえたという満足感が残りにくいですし、録音は証拠を取られていると疑心暗鬼を生む可能性もあります。

私の場合は、「後でまとめたいので」と一言断ったうえで、ノートに走り書きでメモをして後からPCに打ち込むようにしています。

ヒアリングのまとめと分析

ある程度の人数のヒアリングが終わったら、まとめと分析の作業を行っていきます。
まとめでは次の作業をします。ヒアリングした内容を箇条書きにまとめます。箇条書き1つに1つの要因をまとめるのが大切です。

例えば、「自分の部署が何を求められているのか良くわからないし、上司に相談する機会もないから大変なんです。」という意見があったとします。前半は部署の方針やあるべき姿が分からないという内容です。後半は、上司とのコミュニケーションの問題です。ですので、「自分の部署が何を求められているのか良くわからない。」、「上司に相談する機会が無いから大変」という2つの要素に分けて記録します。

次に箇条書きで表記した内容をグループに分けていきます。グループの分け方は決まっていて、3つです。「方針マネジメント」、「サービスマネジメント」、「モチベーションマネジメント」です。3つの視点については「すぐに実践したくなる、結果が出る経営の仕組みづくり その①」もご覧ください。

いつもブログで申し上げていますが、経験的にも組織課題はこの3つの分類で十分と認識しています。先ほどの作業で書き出した箇条書き1つ1つが「方針マネジメント」、「サービスマネジメント」、「モチベーションマネジメント」のどれに該当する内容なのかラベルを張っていきます。補足しますと、コミュニケーションの問題は「モチベーションマネジメント」の中に含めます。

全体の傾向分析

こうしてヒアリング全員分のデータを箇条書きにまとめ、ラベルを張っていきます。次の作業として、全員分のデータをまとめていきます。

今度は、「方針マネジメント」、「サービスマネジメント」、「モチベーションマネジメント」毎のグループを作ります。そうすると以下のことが分かってきます。

まず、3つの項目のどの内容が多いのか。これは単純にそれぞれの項目に分類された箇条書きがいくつあるのかで分かります。

その次に、3つの項目毎の分析に進みます。例えば、「サービスマネジメント」の問題でもどういった内容が多いのかを分析していきます。マニュアルや標準化に関するものなのか、教育に関するものなのか、資源不足に関するものなのか、などです。

こうすることで、量的にどういった課題が多いのか、質的にどういった課題が多いのかのかがざっくりと把握できます。

戦略的に職員を巻き込む方法がヒアリング

結局3つに分類するならば、ヒアリングは不要ではないかという意見もあります。確かに最後は3つ分類に落ち着きます。ただ、私は以下の2点からヒアリングのプロセスは必須だと考えています。

まず、ヒアリングを行うことで、3つのプロセスの中でも特にどこの意見が多いのか、その内容はどういう傾向があるのかが分かります。課題の濃淡と質を分析することで、どこから手を付けるべきかが分かります。

もう1つは職員を巻き込むためです。そもそも、組織課題を明確にすることがゴールではありません。組織課題を明確にして、経営改善を行うのが目的です。そのためには職員を巻き込み、協力してもらい、主体的に動いてもらうことが重要です。そのための仕掛けがヒアリングです。

冒頭で良くしたい思いを伝えると述べました。経営者から職員への決意表明のメッセージになります。そしてヒアリングの結果出てきた課題は、職員自身の口から出たものです。「そうそう、これが課題だよね。分かってもらえた。」と共通認識し納得を得やすいです。改革へのモチベーションを高めやすくなります。


経営改善の横展開について

「サービスマネジメント」から改革をスタートさせたとします。残りの「方針マネジメント」と「モチベーションマネジメント」はいつ手を付けるのでしょうか。私のやり方ですとそれは自然とタイミングがやってきます。改革に参加している職員から声があがるのです。

部署業務の標準化や職員の力量の明確化などの作業を進めていると、ある時点で職員から意見が出てきます。

「そもそもうちの部署や部門のミッションってなんだっけ?」

これはそのものずばり「方針マネジメント」の課題です。「じゃあミッションを作ろう。」、「中期の経営計画も必要だ。」と話が進んでいきます。そして、それらを作ると「どうやって周知しようか。」、「どうすれば部下に参画意識をもってもらえるだろうか」と話題が展開していきます。こうなると「モチベーションマネジメント」の課題です。

このように、どこから入ってもいずれ横展開していきます。機が熟すのを待って取り組んでいった方が、結果として早くかつ効果がでることを経験しています。


組織サーベイじゃだめ?

最後に、組織課題の見える化と組織サーベイについて述べたいと思います。

組織課題を見える化させる方法として組織サーベイがあります。

組織サーベイとは、構造化された質問項目を使ったアンケート調査のことです。良い点は全て数値化されて出てくるので客観的であることと、サーベイによっては他社との比較ができるので、相対的に自分たちの組織の位置が分かるという点です。

組織サーベイは上手に活用すると有効だと感じます。ただ、いきなり組織サーベイから入るのはあまりお勧めしません。

理由は以下の2点です。


まず、使いこなすのが難しいということです。数値化されるのは良いのですが、サーベイ会社から膨大な数字と共に分厚い報告書が届きます。これを消化して使いこなすのが難しい。そのまま読むと「そうだよね。だけどどうしたら良いの?」となります。


2つ目は、職員を巻き込んで組織改革をする上で、ペーパーによる調査がどこまで有効かという問題があります。職員を巻き込むためには、丁寧に1人ひとりの声に耳を傾けることが重要です。そういう面からはヒアリングが適していると私は考えます。


以上の点から組織サーベイではなく、まずはヒアリングから始めるのが良いと考えます。ただし、ある程度の組織風土改革が進んで、もう1段階レベルを上げるという時期においては、組織サーベイの活用も有効な選択肢になるとも考えています。


まとめ

今回は、組織課題をどうやって見える化させるとかというテーマで、ヒアリング手法を用いた取組を紹介しました。

こうしてヒアリングを行い改善ターゲットを見定めた次は、それぞれの課題に応じ対策パッケージを打っていくというプロセスに移っていきます。
  • 組織課題の見える化にはヒアリングが有効
  • ヒアリングしたデータを「サービスマネジメント」、「方針マネジメント」、「モチベーションマネジメント」3つの視点から分類し分析する
  • ヒアリングデータに基づいた分析報告を行うことで、経営改善に職員を巻き込むことが出来る
  • 経営改善の横展開は気が熟すのを待つ
  • 組織サーベイは有効ではあるが、ステップアップに使うべきである






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病院・介護施設・福祉サービス事業所など組織力を高め、「人が集まる組織」、「人が辞めない組織」を作る専門家。 「定着率を2倍にする3つの視点」をベースに、採用・定着に関する仕組みづくりを総合的な組織改善を通してプロデュースしている。  高額でありながら離職しやすいとされる人材紹介サービス会社との付き合い方や対策アドバイスを専門的に行えるのは業界唯一である。

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