以前、「職員が定着し収益も伸びる病院・介護施設の組織課題別の経営改善方法 その①」において、経営改善には、まず組織課題を明確にする必要があるとお伝えしました。
何故なら、病院や介護施設に限らず組織改善が難しいのはどこから手を付けて良いのか分からないからです。そして、効果を出すためには、その組織が抱えている課題に応じて対処方法が変わっても来ます。
病気を治すためには、レントゲンや血液データなどの検査を行うのと同じで、組織のどこが病気なのか明確にしなければいけないということです。
組織課題を明確にするための具体的方法
ヒアリングの実施
まず幹部職員にヒアリングを行います。幹部職員とは管理職以上のことです。
何を聴くかというと以下の3つです。
- 部署のあるべき姿と現状を比較してギャップを感じるところはどこか。
- 人間関係で困っていることはあるか。
- 健康管理やモチベーション維持で困っていることはあるか。
ヒアリング記録の取り方
ヒアリングのまとめと分析
全体の傾向分析
戦略的に職員を巻き込む方法がヒアリング
まず、ヒアリングを行うことで、3つのプロセスの中でも特にどこの意見が多いのか、その内容はどういう傾向があるのかが分かります。課題の濃淡と質を分析することで、どこから手を付けるべきかが分かります。
もう1つは職員を巻き込むためです。そもそも、組織課題を明確にすることがゴールではありません。組織課題を明確にして、経営改善を行うのが目的です。そのためには職員を巻き込み、協力してもらい、主体的に動いてもらうことが重要です。そのための仕掛けがヒアリングです。
冒頭で良くしたい思いを伝えると述べました。経営者から職員への決意表明のメッセージになります。そしてヒアリングの結果出てきた課題は、職員自身の口から出たものです。「そうそう、これが課題だよね。分かってもらえた。」と共通認識し納得を得やすいです。改革へのモチベーションを高めやすくなります。
経営改善の横展開について
「サービスマネジメント」から改革をスタートさせたとします。残りの「方針マネジメント」と「モチベーションマネジメント」はいつ手を付けるのでしょうか。私のやり方ですとそれは自然とタイミングがやってきます。改革に参加している職員から声があがるのです。
部署業務の標準化や職員の力量の明確化などの作業を進めていると、ある時点で職員から意見が出てきます。
「そもそもうちの部署や部門のミッションってなんだっけ?」
これはそのものずばり「方針マネジメント」の課題です。「じゃあミッションを作ろう。」、「中期の経営計画も必要だ。」と話が進んでいきます。そして、それらを作ると「どうやって周知しようか。」、「どうすれば部下に参画意識をもってもらえるだろうか」と話題が展開していきます。こうなると「モチベーションマネジメント」の課題です。
このように、どこから入ってもいずれ横展開していきます。機が熟すのを待って取り組んでいった方が、結果として早くかつ効果がでることを経験しています。
組織サーベイじゃだめ?
最後に、組織課題の見える化と組織サーベイについて述べたいと思います。
組織課題を見える化させる方法として組織サーベイがあります。
組織サーベイとは、構造化された質問項目を使ったアンケート調査のことです。良い点は全て数値化されて出てくるので客観的であることと、サーベイによっては他社との比較ができるので、相対的に自分たちの組織の位置が分かるという点です。
組織サーベイは上手に活用すると有効だと感じます。ただ、いきなり組織サーベイから入るのはあまりお勧めしません。
理由は以下の2点です。
まず、使いこなすのが難しいということです。数値化されるのは良いのですが、サーベイ会社から膨大な数字と共に分厚い報告書が届きます。これを消化して使いこなすのが難しい。そのまま読むと「そうだよね。だけどどうしたら良いの?」となります。
2つ目は、職員を巻き込んで組織改革をする上で、ペーパーによる調査がどこまで有効かという問題があります。職員を巻き込むためには、丁寧に1人ひとりの声に耳を傾けることが重要です。そういう面からはヒアリングが適していると私は考えます。
以上の点から組織サーベイではなく、まずはヒアリングから始めるのが良いと考えます。ただし、ある程度の組織風土改革が進んで、もう1段階レベルを上げるという時期においては、組織サーベイの活用も有効な選択肢になるとも考えています。
まとめ
- 組織課題の見える化にはヒアリングが有効
- ヒアリングしたデータを「サービスマネジメント」、「方針マネジメント」、「モチベーションマネジメント」3つの視点から分類し分析する
- ヒアリングデータに基づいた分析報告を行うことで、経営改善に職員を巻き込むことが出来る
- 経営改善の横展開は気が熟すのを待つ
- 組織サーベイは有効ではあるが、ステップアップに使うべきである
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